面白がって生きるコツ

講師 児童文学作家 今関 信子 先生

1997年1月2日、ロシアのタンカー、ナホトカ号が二つに折れた話から始まりました。
後で気づきましたが、これは先生が書かれた絵本「イルカをおそった黒い波」の読み聞かせでした。
タンカーから重油が漏れ出し海岸が汚染される事故が発生しました。
福井県の小さな水族館での出来事です。
カマイルカなどの小さな生き物は他の水族館が引き受けてくれたのですが大きなバンドーイルカの親子2頭が残ったのです。
イルカは水面に頭を出して呼吸するのでオイルが押し寄せると生きていけません。
時間が迫る中で声を上げてくれたのが須磨水族館でした。
ここから大掛かりな引っ越し大作戦が展開されます。
真冬の海に大勢のボランティアの人がイルカのプールに入り親子のイルカの周りに人の輪を作ります。
その輪を少しずつ小さくしてイルカの親子を大きな担架に乗せ、クレーンで吊り上げて水槽のあるトラックに載せるのです。
この作戦は何とか成功下のですが、もう一つ大きな問題がありました。
子供のイルカは生まれたばかりで食事もまだできない状態でした。
イルカの赤ちゃんは食事ができないと生きていけません。
大変な移動が重なり水族館の飼育員さんは誰もが食事ができるかどうか心配していました。
須磨の飼育員の努力で7日目にイワシを食べられるようになり、すぐに福井の水族館にも知らせが入りました。
関係者全員が安堵した瞬間でした。
イルカの親子は多くのボランティアの人に助けられて生き延びる事が出来たのです。
子供のイルカはボランティアからラボちゃんと名付けられました。

面白がって生きるコツ

レイカディア通信 vol14より抜き書きしました。
先生は1942年東京生まれとのことですから終戦前の混乱期の生まれです。
戦後食糧難の時代にお腹を空かせて学校へ行くのが常だったそうです。
小学校には図書館も学級文庫も無く、周りにほとんど本はありません。
給食の時間に先生が読んでくれた本を今でも覚えているくらいだそうです。
おばあさんの昔話やラジオドラマの音声を聞いていろいろな想像を働かせていた子供時代だったそうです。
中学からは本に触れる機会も増え、高校では文芸部に所属して図書館に入り浸る日々だったそうです。
こんな経験から幼稚園教諭になる夢を実現されました。
ピアノや絵は上手ではなかったけど、読み聞かせは上手だったそうです。
もっと上手にと思って児童文学の研究会などに参加するうちに、自分で本を書きたいと思うようになり作家への道が開けたそうです。
読書会で児童書の編集者と知り合ったことで一冊目の本が出版できました。
以降出版した本は100冊を越えますが、中には300枚の原稿を9回も書き直したもののあるそうです。
この本は実在の児童養護施設の子供達の物語でした。
この子らの為にもという思いが、無我夢中で頑張らせたと振り返っておられます。
今でも、誰かの為にという思いが自分を創り出していると感じるそうです。
誰かの為にという思いが自分を夢中にさせ、興味を広げ、視野を広げ毎日を面白くしている。
「好奇心が毎日を面白くする」これが極意のようです。
年を取ると体が動かないとか、何かができないとかできなくなることに目が向いてしまいがちです。
先生はこれまでを振り返ると、何もない時にも興味があるものはあったし、誰かの為に夢中で努力したこともあるし、振り返ると今まで面白い人生だったと言われています。
好奇心を持てばこの先も大丈夫と思ったそうです。
「たとえ寝たきりになっても天井を眺めて、あれこれ想像して面白がっていると思うわ」と話されています。
先生の言葉です。
「人生、理不尽なことも起こります。いろいろな生き方があります。どんな命もいっぱい、いっぱい生きて、自分らしい人生にしてほしい。」
「どうやったら自分らしいか?は無理しないことが第一で、長くやっても苦しくないものを選んでほしい。」
「そして、だんだん楽しさが深まっていけたら、素晴らしいと思います。」

紙芝居の魅力

最後に「オオカミと七人の子ヤギ」の紙芝居をしていただきました。
昔話はこんなものだというのではなく、感じ取ってもらうという考えで話しています。
人の人生は一人一人違うので、捉え方も異なります。
大きな木のイメージも人それぞれ違います。
「言葉を立てる」という表現があります。
ナレーションの技法として知られていますが、大事な部分を強調するための手法です。
声の高低: 立てる言葉は高めの声で発音します。声のトーンを上げて、その言葉を強調します。
声の大小: 立てる言葉は大きい声で発音します。音量を調整して、その言葉を際立たせます。
「言葉を立てる」ことで、相手に伝えたいポイントを明確に伝えることができます。
紙芝居は作る時は苦労するものですが、話が伝わった時は楽しいものです。

面白いものはどこにでもあります。
見つけた時が面白い。