講師 特定非営利活動法人 加楽 楠神 渉 先生
東近江市の愛東地区の話です。
現在有名なのはマーガレットステーションですが、奈良時代から続く百済寺がある地域です。
1. 人口減少
日本列島全体で顕著になっていることですが、地方の人口減少と高齢化が進行しています。
愛東地区でもここ10年で住民1000人が減少しています。
現在の人口は4351人 高齢化率34%です。
働く場所が無く、子供たちはこの地区からでて、外に住む事例が増えている為です。
東近江市は人口11万3384人で高齢化率は27%です。高齢化率は都市部ほど低く、地方ほど高くなる傾向は続くと考えられます。
日本全体に見ても2000年の人口1億2784万人高齢化率19.6%をピークに急激に減少しています。
2030年の予測は人口1億1522万人高齢化率31.8%、2050年には人口9515万人高齢化率39.6%になり2100年には明治時代と同じ人口4771万人高齢化率40.6%の予測が出ています。
この予測は統計的なものでほぼ正確に推移すると考えられるそうです。
大変な転換点におかれていることが実感できます。
何が起こるのでしょうか?
2. 愛東地区で起こった事
地区内唯一のスーパーマーケットの閉店が決まったのです。
地域の高齢者を中心に驚きが広がりました。
店主が高齢になり、冷蔵機器の老朽化や消費増税のためのレジの更新費用のために閉店したのです。
地区の外に買い物に行けない高齢者のために、何とかならないかと言う声で17名が相談を始めたのが最初でした。
3. 新店舗開設へ
地域外まで買い物に行けない高齢者を支えようと、地元住民による「愛東の暮らし・つながり創造会議」が発足しました。
新たに店舗を開設するために300万円の寄付をお願いした結果、800万円が集まりました。
寄付は1口2000円で、できれば5口お願いしたいという内容で開店後に1割は買い物券をお渡しするという内容でした。
お金が集まった事で現実の事業が始まりました。
内装だけでなく外装も修理が必要になり300万円では足りず、ほぼ800万円かかったそうです。
2年の準備と改修作業を経て「アイ・マート」がOPENしました。
私たちのアイ、と愛東のアイです。
「アイ・マート」に込められたコンセプトは地域住民と医療、介護が連携した居場所づくりでした。
①ひきこもり者、若年性認知症の方の働く場所の創出
②ママ友さん世代の活動の場所
③高齢者の健康づくり、買い物支援
4. 「アイ・マート」内で実施されている活動
I・martヘルス・ワーク倶楽部
イートインスペースが作ってあるので、買い物ついでに体操や軽作業を行ってもらっています。
ヘルスの日とワークの日を分けて活動を行うそうです。
近くの大学の学生が講師として参加してくれています。
・認知症の方にクッキーづくりを行ってもらっています。
外ではプランターの花作りなども行います。
・講座の開設 このスペースを活用してエスプレッソの入れ方講座も行っています。
講師は地元もイタリア人の方です。
・サロン活動 地域サロンの開設が行われています。 フレイル相談会 健康づくりサロン
5. 新たな展開へ
①スーパーに来られない方も多いので、移動販売も行っています。
移動販売は近所さんの情報が多く集まります。
フレイルになりそうな人の情報もあるのでケアマネジャーが移動販売とつながることによってフレイル傾向の人に早期支援ができるようになります。(要介護の手前で止めたいのです)
②子供の活動の場所
イートインスペースは電源とWi・Fiが自由に使えるので子供達が集まっていました。
自然に子供の居場所はできていました。
これに目を付けていろいろな活動が発生しています。
大学生の主導でピザ窯を作るなどのワクワクする企画ができています。
③あいとう通学応援バスの実現
愛東は自然豊かな場所ですが、JRの駅から離れているので高校生の通学は大変です。
ここには近江温泉病院があり、患者の通院支援としてバスが運行しています。
このバスは朝一に空で能登川駅に行き、最終能登川駅から空でかえってきます。
この空車運航時に生徒を載せてもらえないかと交渉して実現しています。
病院側も福祉に協力する事で知名度も上がるしイメージアップにもつながります。
6. 活動を通して
介護保険ができて23年、地域と家族の関係が希薄になってしまったように感じます。
①地域の中に居場所・相談できる場所があることの大切さが増していると思います。
②時計の針は戻りませんが住民をど真ん中にした新たな仕組み、地域、家族、各種団体のつながり作りが必要だと思います。
☆子どもも、お年寄りも、障害者も、外国人も、みんなで地域の事を考えていく事ができればと思います。