鈴鹿山麓小さな村のよもやま話

講師 43期地域文化学科生 鍋家 渡支雄 先生

先生は草津キャンパスの先輩です。
村の小学校で児童たちに水の一滴は血の一滴と言われた話を通して水の大切さと食べ物の大切さを教えてこられたそうです。
現在は甲賀市になり滋賀県の十分の一の面積でその7割が森林、1割が農地という自然環境に恵まれた地域です。

1. 山の神のお話

山の神の話は古事記にも日本書記にもでてききます。
山の神は動物のオオカミを指す場合が多く、鹿、猿、猪は神の使いとされていました。
オオカミが鹿、猿、猪を食べていたからだと想像できます。
人は山の神に子孫繁栄を願いました。
赤心を持って願えば叶うと信じていました。
社会全体で子供を大切だと思わないと子供は増えないと考えていたので昔から子供を大切に育てていました。
農村の子供がこんなにのびのび育っている国は世界中探してもまれだと思います。
農村には農民の山の神があり、山には杣人の山の神が祭られていました。
村人の願いは五穀豊穣と子孫繁栄でした。
自然に生かされていると考えていたので、自然の中の神にお願いしたのでしょう。
これは自然な事でした。
大自然に生かされているという自然を崇める気持ちは食文化すなわち命を大切にすることにつながります。
山の神の為の祭りや行事は地域の人々が話し合って何かを行うという、より良い社会を作ることにつながっています。
このような説明の間に各地域の行事についての内容説明等のお話がたくさん挿入されました。

2. 講のお話

甲賀の村々にはいろいろな講がありました。
経済的に集まる頼母子講 等、信仰を同じくする人が集まる観音講 等 社会的な助け合いの萱講 等です。
これらの講は目的を同じにする人々は集まりです。
助け合うためでもあり、情報交換の為でもありました。
・代参講(伊勢講、愛宕講等多数)
お金がかかるので年に数人ずつ交代で伊勢神宮へお参りしました。
・二十三夜講、十九夜講 
女性だけの講で夜中に出る月にお願いをするための講
「話した内容は口外しない決まり」でした。
・庚申講 
一晩中寝ずに話をする講 
・萱講 
萱で屋根をふき替える為の協働組織の為の講
屋根の吹き替えは2日間で終わらせる必要があった。
・蕎麦講 
昔、蕎麦は危険食でした。
不要になった蕎麦を腹いっぱい食べる行事としての講
米が実らないと分かった年の8月に種を蒔いても秋に収穫ができたので種を共同で保存していました。
その他、稲荷講、観音講、日待ち講、山上講、富士山講、大飯講などがありました。
現代社会に講と言う組織が残したものは?
①集落のコミュニティ、共同生活を守る
②助け合いの精神
③他人に迷惑をかけないという秩序
昔の人が言う「兄弟は他人の始まり」と言う言葉の意味は他人も兄弟であるという意味です。

3. 村の教え

村で伝わってきた行事の意味や意義を掘り起こしてほしいと思います。
そこには自然観があります。
自然があって人間がいるので動物とも平等です。
お互い自然に生かされていると考えるからいろいろな神様が祭られることになります。
謙虚に生きることに繋がります。
これは死生観にも通じていると思います。
老人の役割、老後の生活の重要性も感じます。
年がよってからの夫婦と言う言葉もあるし人間だけに年寄りがいます。
昔は皆現代っ子と言われた人達です。
誰かのためになるから居ると考えましょう。
昔の行事はそれを教えていると思います。