講師 滋賀県立大学名誉教授 寄本 明 先生
一般社団法人 Save Our Kids 特別顧問
1. 日本の重荷
現在の日本は若い世代に支えられている状況です。
多くの高齢者を少なくなった子供が支えていると言えます。
我々高齢者ができる事はできるだけ重荷にならないようにすることで、これは自分の幸せにも繋がることです。
2. 平均寿命と健康寿命の差
2021年の平均寿命は男:81.5歳、女:87.6歳です。
2019年の健康寿命は男:72.7歳、女:75.4歳です。
平均寿命と健康寿命は男:8.8歳、女:12.2歳です。
あなたは人生最後の10年をどう過ごしますか? 今、世界中で問いかけられています。
これが本日のテーマです。→これは今のあなたの生活に掛かっているのです。
Change to the future
3. 健康の三本柱は栄養・休養・運動
栄養:空腹を感じて体が定期的に求めてきます。
休養:睡眠が代表ですが、これも体が求めてきます。
運動:不足しても体が求めて来ません。意志の力で自ら動く必要がある項目です。
4. 運動をしないとどんな影響があるのでしょうか?
宇宙飛行士やベッド上で寝たまま生活する等、多くの実証実験が行われています。
★運動不足の影響
①心臓の容積が減少します。→心機能の低下
②体重は変化しませんが筋肉量が減少します。→体脂肪が増加
③最大酸素摂取量の減少→持久力の減少
④尿からカルシウム排泄量が増加→骨が弱化
⑤血液循環機能の低下→貧血の発生
⑥平衡機能の低下→転倒しやすくなる。
多くの人体実験で証明されています。実験に参加人は元に戻すために2か月程度運動をして調整する必要があります。
5. 筋肉
年齢に関係なく、運動を繰り返すと筋繊維が太くなります。
運動をやめると廃用性筋委縮が起こり筋繊維は細くなります。
6. 骨の代謝
骨は普通2年半ですべての骨が新しくなります。
体の中で骨の代謝が常に行われているからです。
食事からとったカルシウムと骨の中にある破骨細胞が壊したカルシウムを小腸から吸収して骨芽細胞が新しい骨を生成しています。
骨芽細胞は年を重ねると弱くなりますが、骨の長手方向にストレスを与えるとよく働くようになります。
走る、飛ぶ等で骨にショックを与えると骨を強化することができるのです。
歩くよりスローなジョギングが良いです。
カルシウムの吸収には日光を浴びてビタミンDを働かせる必要があります。
15分程度でも効果がありますので日光を浴びてください。
7. 運動不足と栄養素の過剰摂取
人は飢餓に備えてエネルギー源を蓄える性質があります。
400kCalは30gの脂肪として蓄えられます。
このことが様々な疾患として現れてきます。
動脈硬化や高血圧、代謝系では糖尿病、骨粗鬆症、腰痛、脂肪肝、肝硬変などです。
死因別の死亡率の推計を見ると、今はガンがトップですが、心疾患と脳血管疾患を合わせた運動不足の影響が要因の疾患の方が上回る傾向が見られます。
運動によってガンが減る証拠も見つかっています。
運動がこれらの数値を下げる効果があることは明白なのです。
8. 体力改善の可能性と意義
体力は青年期にピークを迎え、徐々に低下していきます。
青年期の前にピークを上げておくことは全体を改善する効果があります。
重要なのは中年期に低下していく体力が落ちる率を緩めることで老年期の体力低下を低く抑える事が可能です。
中年期に体力に働きかければ骨は増大するし多くの項目が維持できる可能性が高いのです。
9. 健康寿命を阻害する因子の予防
運動は健康寿命を阻害する因子に対する予防効果があります。
①内臓脂肪、メタボ →有酸素運動が有効 血管に脂肪がつく前に改善しましょう。
②運動器症候群(ロコモ)サルコペニア、フレイル →軽い筋力トレーニングやストレッチが有効
③認知症、軽度認知症 →軽度有酸素運動、複合課題が有効
④熱中症、暑熱障害 →暑い季節の前の有酸素運動が有効、筋肉は水分を保持します。
10. ウォーキングの効果
ウォーキングは消費エネルギーが増え、身体機能が活性化されることで糖質、脂質の代謝が促進され、内臓脂肪の減少に繋がります。
その結果、血清脂質異常、高血圧、高血糖の改善に繋がります。
①心臓疾患の予防・改善
②肥満、動脈硬化、高血圧の予防と改善
③糖尿病の予防と改善
④生活の余力の増加(疲れにくくなる)
⑤粘り強い筋肉と平衡機能の向上(転倒防止)
⑥骨からカルシウムの脱出を予防(骨粗鬆症の予防)
ウォーキングの強度
速度はサッササッサと歩く強度が、一番脂肪が消費される強度です。
一回20分以上で目標は30~40分間が理想です。
原則は毎日ですが、週に3から4日以上で最低一回は続けてください。
ノルディックウォークは足腰への負担が減り、上半身も使うのでエネルギー消費も20%程度増えます。
歩幅を大きくして安定した歩行を心がけます。
11. ロコモティブシンドローム
体の骨、関節、筋肉、脳、軟骨、腱など運動に係る部分を運動器といい、働きが衰えると自立度が低下します。
これらの要因で要介護になる危険が高い状態をロコモティブシンドロームと言います。
12. 役立つテスト
①閉眼接指テスト 眼を閉じた状態で左右に広げた手の指を近づけて、指の先端をタッチさせる。
(指の動きに合わせて空間を認識し、時間と位置を調整する能力)
②膝スリ・トントン 左右の手をパーとグーにし、開いた手で足をすりすりし、閉じた手は足をトントンたたく。
(脳から両手に異なる指令を出して、協調した動きにする)
13. サルコペニア
加齢性筋肉減弱症
14. フレイル
高齢になって筋力や活力が衰えた段階をフレイルと名付けた。
要介護状態に陥る前にこの状態に陥ることが多いとされている。
15. 認知症
予防するには前頭前野をトレーニングすることが重要。
前頭前野の仕事
思考力、想像力、短期記憶、学習、適切な情報処理、コミュニケーション、意欲、集中力、行動・情動の制御
行動プログラムテスト 「グー・パー・パチン」 前頭前野機能検査(FAB)
筑波大学、中央大学の研究
軽い運動でも認知機能は高まる。わずか10分間の運動でも脳の中の注意、集中、判断、計画、行動能力などの認知機能を支配する部位の活動が高まることと、実行機能が実際に高まることを科学的に確認した。
加齢やストレスの影響を受けやすい前頭前野の機能向上に軽運動でも効果があることが裏付けられた。