終活に向けての基礎知識 ~遺言書とエンディングノート~

講師 司法書士 羽田 智也 先生

司法書士としての経験から私たちの今後のトラブルを防ぐための話を聞きました。
私たちが「放置していること」「気がかりに思っていること」を先送りしないことが最も大事です。
次の世代になると手続きが大変なだけでなく、事情が分からないために状況が不利になることもあるのです。
・先祖名義の不動産の相続登記
・近隣とのもめごと(境界、越境)の解決
・誰もお世話ができないお墓の墓仕舞
これら加えて家族に知っておいてほしい自分の希望を紙に書いて残しておくことが大事です。
色々考えながら書くと時間がかかります。完璧主義は厳禁です、どのページからでもとにかく書くことです。
市販のエンディングノート(どれも差はないです)気に入ったものでOKです。
(日本司法書士連合会:日司連のエンディングノートもあります。)
大学ノートもOKです。クリアファイルにメモや書類を挟んでいく方法もあります。

1. 遺言書とエンディングノートの違い

遺言制作の目的は自分の財産を誰にどのようにあげるかを意思表示します。
遺言書には法的効力があります。法定相続分や遺産分割協議に優先します。

2. 司法書士から遺言書を書いてほしい人

・子供がいない人
・前妻との間に子供がいる方
・1人身の方
・子供同士で相続割合を変えたい、疎遠な子供がいる方
・相続人でない人や団体に財産を渡したい方
・相続人の間で遺産分割協議が見込めない方
 分割協議は一人でも欠ければ無効になり裁判所の手続きに費用も時間もかかります。
 存続人が音信不通や認知症の方がいる場合も解決には時間と費用がかかります。
・事実婚、同性婚の方

3. 相続の基礎知識

法廷相続比率
①子供がいる場合 配偶者が1/2、子供は1/2を人数で分割します。
②子が無く親がいる場合 配偶者が2/3、親が1/3を人数分で分割します。
③子も親もいない場合 配偶者が3/4、兄弟で1/4を人数で分割します。
代襲相続
子や兄弟姉妹が亡くなっている場合に孫や甥姪がその立場に成り代わって相続します。
養子縁組
親子関係は養親、養子を含みます。
配偶者の連れ子は養子縁組をしない限り相続人になれません。
こんな場合には遺言を書く必要があります。
自分の財産の法定相続人を認識して、財産分与に希望があれば遺言書を残すことが必要です。

4. 遺言書を知る

特別な隔絶地にいる場合や危急時の遺言もありますが限定的な遺言です。
一般的には自筆証書遺言書と公証役場で管理される公正証書遺言の2つです。
①自筆証書遺言
いつでも書けて費用も掛かりません。
秘密にすることもできますが、専門家の関与がないので内容が無効になったり破棄や改ざんの危険があります。
発見されない恐れも十分考えられます。
これらをある程度カバーできる制度に自筆証書遺言保管制度があります。
家庭裁判所の検認:自筆証書遺言書を発見しても封印を開封してはいけません。
この遺言が有効になるためには家庭裁判所の検認と言う処理が必要です。
内容の有効、無効の判断も筆跡鑑定などの本人確認もありません。
遺言書を発見した場合は封印を開かず裁判所に検認を申請します。
裁判所から相続人に招集がかかりその場で開封して検認の印が押されます。
これでこの遺言が有効になるのです。
②公正証書遺言
専門家のチェックが入るので内容や形式の誤りのおそれも改ざんもない。
交渉役場で検索すれば必ず発見される。
費用がかかる点といつでもどこでもと言う訳にはいかない。
書き直す可能性のある場合は自筆証書遺言とし、内容を決定した場合は公正証書遺言が司法書士としてはお勧めだそうです。

5. 遺言書を書こう

①これだけは守る
・タイトルは遺言書
・日付を正確に書く、年月日まで正確に書きます。 12月吉日は無効です。
・住所、氏名を正確に書き実印を氏名の右隣に押します。
 シャチハタ、スタンプは無効ですし名前が無いものも無効です。
・本文は消えないボールペンなどを使い自筆で書きます
②あやふやな言葉は使わない
・「自宅の相続」:あやふやな自宅と言う言葉も土地と建物があり公正証書では認められません。
③その他記載すると良い事項
・相続人以外に財産を渡す場合、それを執行する人を指名しておくと手続きがスムーズです。
 指定がなければ、家庭裁判所に選任を申し立てすることになります。
・予備的遺言
 予定した相続人が亡くなっていた場合の相続人をその子供などに指定しておくことです。
 指定がなければ、無効になった相続分について相続人全員の分割協議が必要になります。
・譲る、与える、任せる、託す、ゆだねるなどはあいまいな表現は使わないようにします。
・夫婦共同の遺言を書く人がいますが無効です。
遺言は一人一人が原則です。

6. 遺言にも弱点はあります

災害、大不況、不動産の処分等事情が変わることがあります。 
★司法書士としては作成後に専門家のチェックを受けることをお勧めします。