滋賀の気象特性と防災気象情報の利用について

講師 彦根地方気象台 次長 山崎 誠導 先生

1.滋賀県の気候

滋賀県は3つの気候区が重なる地域にあります。
①日本海型 長浜以北と琵琶湖大橋から北の湖西が含まれます。
②東海型 長浜から南の湖東地域は三重・名古屋と同じ気候区に属します。
③瀬戸内型 びわ湖大橋から南の守山・草津・大津を含む地域は瀬戸内気候区に属します。
中央に琵琶湖があり、それを取り囲むように1000m級の山があり北部に多雪地域を有することは大きな特徴です。
この地形に3つの気候区の特性が混ざりあうので、穏やかでありながらも四季の変化が明確な地域です。
各地域とも背後の山から吹き下ろす風が強くなる時があり、いわゆる「おろし」となる強風に特徴があります。
比良おろし、鈴鹿おろしを良く聞きますが、低気圧が日本海を東進する場合の三井寺おろしも南西の強風です。
雨は周囲の山が高くないので雨雲が山を越える点が特徴です。
南東の風による大雨は鈴鹿山脈を越えて甲賀から湖東の山沿いに降ります。
台風などの場合は湖西の山地にも大雨が及ぶことがあります。
もう一つ南西風による大雨は大阪湾からの湿気が線状に流れ込む事例です。
大津から近江八幡、彦根にかけて線状降水帯による大雨があります。
雪は風向きによって降る場所が想定できるようです。
風向きが西よりほど北部に降雪があり、北よりほど南部の降雪になるようです。
各地の最大積雪の記録
伊吹山 11m82cm  柳ケ瀬249cm 虎姫140cm 今津105cm 彦根93cm 米原 91cm 南小松63cm 土山52cm 近江八幡 40cm 日野37cm 信楽23cm 大津 22cm

2. 滋賀県の気象災害

過去の災害を知ることは重要です。
滋賀県の大雨の典型的なパターンは前線+台風です。
①1896年 琵琶湖洪水 
 9月3日から10日間で彦根の年間雨量の半分の1008mmの大雨でした。
9月7日には一日で597mmの雨が降り琵琶湖の水位が3m76cm上昇し、浸水は最大237日間に及んだという災害です。
要因は秋雨前線が琵琶湖にかかり、南の台風が湿った大気を大量に供給したために起こった大雨です。
②1953年 多羅尾豪雨 
 8月15日に甲賀市で発生した集中豪雨です。
6時間に400mmの雨が降り、初めて集中豪雨と言う言葉が使われました。
原因は南の海上の大型台風と日本列島を横断する前線でした。
③1959年 伊勢湾台風
 大型台風が滋賀県を直撃した事例で他と同様に前線を伴っていました。
広範囲に琵琶湖の水位が上がり、軒下まで浸水し多数の橋が流されました。
彦根の気候変動
全国的に、激しい雨が増加し 局地化、集中化、甚大化の傾向です。
人為的に排出される温室効果ガスの中では二酸化炭素の影響が最も大きいことがわかっています。
CO²の経年変化
1988年350ppmから2022年420ppmまで観測データは増え続けています。
彦根の気温
100年で1.4℃上昇しています。
1980年以降の雨の降り方
時間雨量50mm以上の雨の発生回数は近畿地方の統計で1.7倍です。
雨の観測に数は0.9倍で雨の降る日は少なくなっています。
雨の日は少なくなっているが降る雨の量は増えています。

3. 防災気象情報

防災気象情報の種類と発表のタイミング等を詳しく説明していただきました。
①天気予報
毎日5時、11時、17時に発表されます。
滋賀県北部とは近江西部、湖北、湖東です。
滋賀県南部とは近江南部、甲賀、東近江です。
②大雨警報、土砂災害警戒情報
発表中はキキクル(危険度分布)を確認してください。
気象レーダで雨雲を確認し、雨雲が停滞している場合は厳重に警戒してください。
線状降水帯にも注意が必要です。
③警報や気象情報は随時更新しています。
常に最新情報を活用してください。
スマホなどの画面は更新しないと最新画面にならないので注意してください。
④災害から身の安全を確保するためには、防災情報の積極的な入手が第一です。
その上で「早めの準備、早めの避難」を心がけしましょう。
⑤その他の情報
・記録的短時間大雨情報は各県で基準が異なります。
滋賀県は時間90mmです。
福井県は80mmですし、鹿児島県は120mmです。
・洪水キキクルで洪水警報の危険度分府を見ることができます。
琵琶湖も一つの河川として扱われているので確認してみてください。
・警戒レベルは5段階で表示しています。
避難はレベル4までに行動します。
レベル5は避難では無く、自分で身の安全を確保しなければならない段階です。