講師 植物観察家、植物生態写真家 鈴木 純 先生
植物の研究とはちょっと違う身近な植物のちょっと面白い話でした。
自分にとって未知の事に出会った時の知りたいという思いを究明していく事は大きな充実感があります。
都会の中に育つ身近な植物を通して先生が観察された興味のある事柄を教えていただきました。
植物の好きな人は道端の植物を散歩の途中に虫の目で眺めてください。
今までと違った世界が見えるかもしれません。
1. カタバミ
葉にシュウ酸を含むので噛むと酸味があります。
このため十円玉を葉でこすると磨かれてきれいになります。
動けない植物の虫に食べられない工夫と考えられています。
それでもヤマトシジミと言う小型の蝶だけはこの葉を食べます。
2. シロダモ
公園に葉の裏が白いシロダモの木があります。
名前は葉の裏がシロダもんと覚えます。
ライターでこの葉をあぶると白い色が溶けることがわかります。
この木は和ろうそくの原料になる木なのです。秋に赤い実がなり実を絞ってろうそくを作ったそうです。
3. ネジバナ
日当たりのよい野原で見られる20cmくらいの茎に桃紅色の小花が螺旋状に連続して咲きます。
虫の目になって花を見るとランの花とそっくりでランの仲間だとわかります。
4. ヒイラギナンテン
家の玄関先に植えられることが多い低木です。2月下旬に黄色の花を咲かせます。
虫が来た時におしべが虫に花粉を付ける動作をすることが知られています。
花の奥に細い葉先などを入れるとおしべが内側に動く様子が観察できます。
5. ユウゲショウ
田のあぜ道などで見られ1㎝くらいの花弁4枚のピンクの花を5月から秋まで次々咲かせます。
名前のような艶っぽさは無く、日差しがあれば朝から咲いています。
花が終わると種を付け、茶色くなったころ雨に濡れると開いて水と共に種を外に流し出します。
乾くとまた閉じます。
種は雨と共に流れて水の行きつく場所にたどり着くようにできています。
6. ハキダメギク
ちょっとかわいそうな名前の雑草です。牧野富太郎博士が世田谷の掃溜で見つけて命名したそうです。
虫の目で花に近づくと先が3つに分かれた小さな花びらが5枚あるきれいな花を発見できます。
7. ナガミヒナゲシ
近江でも見かけるきれいな赤い花をつけるケシの仲間です。
アヘンの材料となるアルカロイドは含んでいません。しかし、かぶれることがあるので除草時は注意が必要です。
繁殖力が強力で他の植物の育成も妨げるので特定外来植物に指定されています。
先生が数えたところ、ロゼッタ状の種袋には2800個の種があったそうです。
ロゼッタ状の種袋の上部にある窓から種を蒔いているそうです。
8. プタンターに何でもない土を入れて外に放置するだけで芽が出てきます。
東京ではアメリカフウロ、ホトケノザ、カタバミ、シロザなどですが近江ではどうでしょうか?
これは種が土の中で自分が生きる環境が整うまで待っていた証拠なのです。
雑草の強さの一つです。
9. セイヨウタンポポ
タンポポは葉を地べたに広げて育ちます。
日本のタンポポの生き方
春に花が咲きますが、夏には一度消えて秋にまた復活するそうです。
夏は周りの雑草も育つので夏になると雑草に覆われてしまいます。
日本のタンポポは他の花の花粉でないと受粉できません。
そこで雑草に覆われる夏は一度姿を消します。
根は健在なので又秋になると姿を現して花が咲きます。
一方セイヨウタンポポは自分の花の中で自家受粉して種を飛ばせるのです。
雑草に邪魔されないので年中咲いています。
外来種と在来種の見分け方
外来種の総苞片は、反り返るが、在来種の総苞片は、反り返らない。
10. ナズナ(ぺんぺん草)
田んぼで多く見られる春の七草の一つで初春の若芽を食べます。
花の咲くころに虫の目で近づくと十字の花とハート型の種が見えます。
十字の花はアブラナ科の花の特徴です。
ハート型の種は中央に幕があって二つに分かれ、中にそれぞれ種が見つかります。
種が三味線のバチに似ていることから和名はぺんぺん草です。
11. ハゼラン
夏に高さ30cmほどの茎の先3mmほどの赤い5弁の花びらをつけます。
この花は午後3時くらいに咲くので別名三時花とも呼ばれます。
マチバリの頭のような丸い実の状態で見かけることが多く、マチバリソウとか線香花火に例えて花火草とも呼ばれます。
明治のころに日本に来た外来植物です。
12. ミズヒキ
林のふちなどに生え、秋に細長い花穂をつけ多くの小さな花つけます。
上から見ると赤い花、下から見ると白い花に見えることから紅白のミズヒキの名があります。
虫の目で花に近づくと4枚の花弁があり上が赤く、下が白いことがわかります。
13. ホトケノザ
寒さに強く早春のあぜ道に紅紫の唇型花を多数つけます。
よく見かけますが虫の目で見ると美しい花です。
種に種枕と呼ばれる白い部分があり蟻が運んで幼虫のエサにします。
このような蟻と関わり合いのある植物も多いのです。
ヒメオドリコソウ、タケニグサなどがあります。
14. アカメガシワ
新芽が赤いのが特徴です。カシワは大きい葉の意味です。
この赤は紫外線対策と考えられ、葉自体は緑色で赤い毛が付いているのです。
この葉の付け根に蜜線がり蟻が蜜を集めに来ます。
他の虫を追い払ってくれるためと考えられます。
同じくソメイヨシノの葉にも蜜線があります。
15. カラスウリ
カラスウリの花は咲く時間が真夜なので人目に触れることが稀ですが美しい花です。
これはスズメガと言う夜行性で長い吸い口を持つ蛾のためだけに咲くためです。
16. オシロイバナ
英名はフォーオクロックと言い午後4時に咲くという意味で朝には萎んでしまいます。
夜間に開き花筒が長いので口吻の長いスズメガでなければ吸蜜は困難です。
17. オオバコ
オオバコは踏み跡のある所に生える雑草のイメージがあります。
オオバコは踏まれても大丈夫なようにできています。
さらに種が水に濡れると粘りがでて足裏に接着して運ばれます。
踏み跡に広がる性質があるのです。