心の治癒力を引き出す

講師 彦根市立病院 緩和ケア科 部長 黒丸 尊治 先生

元は心療内科の先生です。
心療内科は精神科とは少し違い内科です。
ストレスに関係している内科の医者です。
心と体は相互に関係していると考えるのが心療内科医です。
普通の医者は体を診るだけです。
しかし、経験上心の問題、ストレスは病気に大いに関係すると考えるのが心療内科医です。
心療内科医は心と体をセットで治療することが基本です。
先生はここが重要だと考えられていて、ここが改善すれば病気にも影響すると考えられています。

1. 心療内科医の経験

仕事を続けていて、心にも自然治癒力があることが経験上理解できるようになりました。
薬は嫌いですが、患者の為に薬を出します。
薬には強いもの弱いもの、偽薬まで、いろいろなものがあるので患者の心の安定のために処方します。
それでも、薬よりコミュニケーションが重要なツールと考えています。
患者の気持ちとして
なぜか?わからないが、「まぁこの方が楽かなぁ」「この方がよいか?」「気分は楽だなぁ」
こんな考え方が大切だと思っています。
なかなか難しいのですが「気持ちの持ちようを切り替える事ができれば良い方向に向かうことが多いのです」
確かに、「そうですよね」と肯定していてもなかなかできないのも事実です。
この話もしたいのですが、時間がないのでこの話は別の機会にして違う話をします。

2. 心と体はつながっている

心というものの力を引き出せると体にも大きな影響を及ぼします。
心が持っている治癒力が重要だと思っています。
狭い意味では病気を治すですが、広い意味では心が楽になり、幸せになれるから幸せになるにつながると考えています。

3. プラシーボについて

ちょっと脱線してプラシーボ=偽薬の話です。
医学の世界ではプラシーボが効くことはよく知られています。
特に思い込みの強い人には良く効きます。
患者には心の治癒力を働かせて病気を治す薬と説明しています。
言い換えれば患者をだまして心の治癒力を効かせる薬です。
このような事例は薬に限らず、プラシーボ手術でもあります。
実際、治験で実際に手術を行って効果が同じだった事例もあります。
特に痛みに対してプラシーボは効果があるようです。
医学の世界では必ず治験が行われます。
プラシーボという心の治癒力を上回る結果が出ないと、薬や手術の効果があるとは認められないのです。
治験にプラシーボが使われるのは、明確に効果があることがわかっているからです。
今、世間で広まっているサプリメント類は効いているのか、プラシーボ効果か不明です。
サプリメントはプラシーボ効果だけかもしれないのです。
体に悪い物質が混入する可能性もあります。

4. 緩和ケア病棟の不思議な世界

ガンの痛みではなく、ガンそのものが消えてしまう事があります。
→この現象を調査する西洋医学の医者は少ない。
自然寛解→特別な治療も無く自然に症状が無くなってしまう事があります。
いままで3000人くらい看取っていますが、10人良くなった事例があります。
末期ガンの人のうち300人に一人は治ってしまう事があります。
肝臓がんの患者の事例:非常に心配性の人でした。
肝臓がんを焼き殺す治療を行っていたのですが、ガンが増殖して治療が不可能になって緩和ケア病棟に来られていた。
心配性の人で可能性は低い人でした。
最初の腫瘍マーカ値は6000だったのですが、2か月後腫瘍マーカ値が200に下がり、60から30に下がって退院されました。
肝臓ガン20個くらいが消えていました。
元の主治医は信じませんでした。
前向きや、積極的な人ではなく大変心配性の人でも起こりました。
(障害者の支援をしていた人でしたので何か関係があるのかも?)

5. 心の力は誰もが持っている

心は楽しい事を追い求める力があります。
一方、苦しい事、悩みがあっても何とか乗り越えてきています。
人間関係、子供、近所、嫁舅問題等生きていれば切りがありません。
誰もが乗り越えている=誰もが心の力を持っています。
①高齢者の関心事 健康問題
二人に一人がガンになる時代です。
予防も大切、それでもガンになることはあります。
そんな時はどうしたら良いのか? 
治療できるなら治療しましょう。
転移が見つかると末期ガン扱いになります。
抗ガン剤を勧められるかもしれませんが、治る訳ではありません。
効くという意味はガン細胞が1ヵ月以内に小さくなることを意味します。
無くなるという意味ではないので、医者と患者の捉え方は異なることが多いので注意しましょう。
抗ガン剤治療をしないとなると、緩和ケアすることになります。
この自然な流れで10年生きた人もいます。
緩和ケアではやらない方がよい可能性もあるので検査はあまりしません。
医者は過剰に治療したがる傾向があり、患者はしんどい思いをすることもあります。
今のうちに考えておくことを勧めます。
自分がガンになったと思うと心がキュッとなる気がします。
ガンという名前が良くないのでガンをポンに言い換えるのはどうでしょうか?
大きな効果があるかもしれません。

6. おしまいに

人は幸せとか満足感とかを求める力を持っています。 
どうやって心の力を引き出せるのか?ここがポイントです。
シニアの方が若い人より幸福感が高い。
 「つまらない事でも幸せに感じられる」
楽しい事は人それぞれに違うので、人それぞれ大切にしましょう。
→心の治癒力に繋がります。

緩和ケアに毎月カラーセラピストが2名来ます。
患者は楽しみに交流していました。
ある時腫瘍マーカを測定すると3名の男性の値が2000→500に下がっていた。
原因に心当たりはないが、カラーセラピストの女性は綺麗な人だったので、人の本能にとって重要だったのでは考えています。
イケメンの青年も効果的です。 
自然、運動、縁も効果的です。 
自然の中で暮らすことは10%くらい効果があるようです。
運動も効果があります。
毎日8000歩くらいのウォーキングに早歩きを加えると効果的です。
孤独も必ずしも悪くありません。
夫婦関係は厄介なものです。
妻が無くなると夫も早くなくなることがわかっています。
免疫力が下がっているからです。
夫が亡くなっても、妻の免疫力は下がりません。
「子は育ち、夫は無くなり、今、青春」 
年を取ったら妻の悪口を言ってはいけません。身の為です。