講師 特定非営利活動法人 こどもソーシャルワークセンター 幸重 忠孝 先生
滋賀県教育委員会委嘱スクールショーシャルワーカー
1. 現実社会の課題
自宅で暮らせない子供が全国で42000人余りいます。
ほとんどが児童養護施設で暮らしています。
最近の施設は普通の暮らしができるようにできていますが、赤の他人と一緒に集団で暮らしている訳です。
一人になりたい時もあるのですが、トイレの個室くらいしかありません。
職員も子供10人に一人くらいの配置ですから、一人と10分話しても2時間かかってしまうのです。
しかも養護施設は18歳と言う年齢制限があって、この年齢になれば出なければいけません。
住む場所と仕事がなければ生きられないのが今の社会の現実です。
昔は住み込みの仕事があったのですが今は違います。海外の派遣労働者しかいません。
養護施設から出た子供たちは3か月以内に出て行き、社会の闇に消えていきます。
42000人が児童養護施設で保護されていますが、18歳を過ぎると日本の社会には受け入れてもらえないのです。
受け入れる仕組みが無いのです。
社会福祉はそれなりに頑張っています。
福祉の学校は一時増えていましたが今は少なくなっています。
・家がしんどい子どもがいても、教員は忙しすぎて十分な対応ができていないケースが多いのです。
・学童保育などもありますが、交通の便でいけない子や、100円も出せない子も多いのです。
・親がアルコール依存症で夜の居場所が無い。
・ヤングケアラーも多いし、ケアーが終了すると一人で生活することになるのです。
・小学校、中学校に行っておらず、学習支援があってもついていけない。
・保護者が返してくれと言えば、子供は返すことになる。
・お金の無い家庭が多く、夏休み、冬休みは行くところも無くもっと大変。サンタもいない。
2. ソーシャルワークセンターの活動(ホームページより転載しました)
地域の子どもたちが地域の大人達と一緒に成長する場所です。
①トワイライトステイ
子どもたちの夕刻を支える夜の居場所
多くのこどもたちにとって夜の時間は、学校が終わってホッとする時間です。
しかし保護者の夜間就労、病気や障害など様々な家庭の事情で夜に寂しさを感じているこどもたちもたくさんいます。
トワイライトステイはそんな子どもたちを家庭的な規模(こどもたち2、3人と大人がそれ以上で合わせて5、6人の集団)で夜の時間を過ごします。安心と安全に囲まれた中でこどもたちは本来の姿や力を見せます。
②「ほっ」とるーむ
日中を過ごす第三の居場所
こどもたちにとって日中を過ごす学校は勉強したり遊んだりして友達と楽しく過ごす場です。
しかし、学校生活に息苦しさを抱えたこどもたちもいます。
息苦しさの理由は、いじめなど友達との人間関係、先生との関わり、そもそも集団活動や勉強が苦手など様々です。
「ほっ」とるーむは、こどもたち一人ひとりにあわせた規模で、安全と安心を提供して、まちの大人やこども同士のつながりの中で自分らしさを見つける場所です。
③ユースホーム
生きづらさを抱える若者を支える支援事業
こども時代を「こどもソーシャルワークセンター」で過ごしたこどもたちの中には、高校中退や家庭の事情を抱えたまま若者期に突入しているメンバーがいます。
こども以上に若者向けの支援メニューは少ないのが現状です。
ユースホームはセンターの近くに一軒家を借りてそこでの若者向けの居場所活動と社会につながる機会づくりや自己肯定感を高めるためのボランティア体験活動、そして若者たちの当事者性を生かしてのオーダーメイドの就労支援を行っています。
④ヤングケアラー支援
家庭でケアラーの役割を担っている若者たちによるヤングケアラー支援づくり
滋賀県からヤングケアラー支援体制強化事業を受けてヤングケアラー支援を行っています。
センターに通うヤングケアラーのこどもや若者たちの声から、必要な支援づくりを行っています。
具体的には、ヤングケアラーの若者たちが集まるサロン(オンライン含む)活動やピアスタッフのための合宿活動で出てきた意見から、ヤングケアラーの小中学生向けの体験活動や家での食事づくりを軽減するための配食活動などを行っています。
⑤ネットワーク事業
様々な団体とネットワークを作りながら取り組む多様な活動
こどもや若者たちに活動を届けるため、まちのお店屋さんなどの力を借りて、彼らを支援する様々な取り組みを行っています。例えば、定時制高校と協力して学校内に居場所をつくる活動など、こどもソーシャルワークセンターだけでは出来ない他団体と協力した活動を行っています。また、様々な社会課題(不登校・虐待・貧困・ヤングケアラーなど)のネットワークに参加して、その活動に協力しています。
⑥生きづらさを抱える若者たちによるアウトリーチ事業
ネットの中には社会に背をむけた子どもがたくさんいます。仕事が続かない→夜昼逆転の子どもが多いのです。
この活動は生活困窮、家出、DV、学校中退、ひきこもり、不登校、いじめ、等を経験した18歳から25歳の若者のアルバイトとして同様の問題を抱えている子どもたちの支援をしてもらう事業です。家出対応や、生活支援、ひきこもり対応など成果を上げています。
休眠預金活用法に基づく「脱・孤立のための助成金」が活用されています。
事例1
深夜22時~翌朝5時まで、相談員とソーシャルワーカーがペアになり、ネットの中でしんどさをつぶやく子供たちにSNSで声をかけて話を聞いています。
ソーシャルワーカーが内容を検討し解決策を提案しています。
家出や性被害の危険がある状況の場合は緊急支援を行います。
事例2
ひきこもりの子供とひきこもり経験者の相談員がネットで会話できるようになり信頼関係が築けました。
その後自宅でゲームもできるようになり、徐々に外出もできるようになっていった事例もあります。
親の喜びはこの上ないものです。
また、相談員も徐々に人と話せるようになり他人とのコミュニケーションが活発になっています。
不登校の経験者が不登校の子供の自宅を家庭訪問する対面アウトリーチ活動も行っていて大きな成果が出ているそうです。