認知症サポーター養成講座 

講師 彦根市認知症HOTサポートセンター 相談支援員 西村 りう子 先生

9月は世界アルツハイマー月間です。
彦根市では彦根城を認知症支援のシンボルカラーであるオレンジにライトアップしています。

1. 近年の状況

2025年には65歳以上の20%が認知症になるという推計が厚生労働省から出されています。
①自動車事故
認知症の高齢者の15%が自動車事故を起こしたことがあると家族が回答しています。
免許証の返納が進められていますが、家族にとっては以下のような課題があります。
・外出する機会が減り、認知症が進んでしまう。
・返納にショックを受けて閉じこもりがちになる。
・返納したことを忘れて運転しようとする。
★本人の思い
病気になったことは本当にくやしい。
なぜ?という気持や、自分が自分ではなくなる不安もあります。
家族や周りの人のおかげで、いいように考えることができています。
②増加する行方不明者
2022年認知症の行方不明者は18709人で毎年最多を更新し続けています。
自宅周辺で不明になるケースが多く、届け出当日に見つかったのが77.5%です。
99.6%は1週間以内に見つかっていますが、491人は死亡した状態で発見されています。
③訪問販売、電話勧誘販売に引っかかるケースが増えています。
④高齢者虐待
施設の職員による虐待及び養護者による虐待はいずれも増えています。
虐待を受けた高齢者の7~8割が認知症を患っていたことが判明しています。
認知症と虐待は関係が深いのです。 

2. MCIと予防

認知症への移行段階をMCI(軽度認知障害)と言います。
本人または家族が物忘れを自覚していますが、日常生活は問題なく、物忘れ以外の認知機能は正常です。
この状態は認知症では無く、健常者に戻れる可能性も高い状態です。
予防すれば健常者への回復率は1年で16~41%です。
一方軽度認知症に移行する率も5~15%あります。
MCIになる前からの予防が重要なのは言うまでもありません。

3. 認知症の予防

認知症の予防とは認知症になるリスクを少なくすることです。
①脳血管性認知症の予防
脳血管性認知症は脳内の微細な毛細血管の血流が途絶えて末端の脳細胞が働かなくなることによって起こります。
血管年齢の測定、脳のMRI検査で検知される白質片の多さ等で予測されます。
高血圧症、脂質異常症(高脂血症)肥満などの対策が有効です。
血圧と血液サラサラの状態を保つことがポイントです。
②アルツハイマー型認知症の予防
脳内で生成されるアミロイドβというタンパク質が正常に排出されず蓄積されることによって起こります。
最近このアミロイドβを排出するレカネマブと言う薬が承認されました。
運動、食事をはじめとする生活習慣病対策が発症を遅らせます。
③老化による脳の病気の加速因子を防ぐ
脳や身体を使わない事「廃用」は認知症の発症や進行を加速させます。
手足の先まで体を動かし、脳を使って考えることで老化を防ぎ、認知症のリスクを下げることができます。

認知症予防のポイント
 1.運動する習慣をつける 
   毎日30分以上歩く 等 スクワット、つま先立ち
   軽く息が弾む程度の運動が効果的、脳を使いながらの運動はさらに効果的です。
 2.生活習慣病の予防
   動物性脂質、糖質の過剰摂取を控え、野菜生活へ
  ・栄養バランスの取れた食事を規則正しく取りましょう。
  ・睡眠を十分とり、リラックスした毎日を過ごします。
  ・適度な飲酒でタバコは止めましょう。
 3.脳の活性化
   楽しくできる事を仲間とともに  
   人と話すこと=脳の活性化
   ※自分が楽しくないとストレスになり逆効果の事もあります。
  ・新聞、本を読む。声を出して読むと効果的です。
  ・日記をつける。 昨日の出来事を今日書きます。
  ・料理を作る。 2品を同時進行で作ると効果的です。
  ・計画を立てる。買い物、旅行、ハイキング

4. 認知症の人が安心して暮らせるために

尊厳を持って最後まで自分らしくありたい。
これは誰もが望むことですが、この願いをはばみ、深刻な問題になっているのが認知症です。
今や老後の最大の不安となり、超高齢社会を突き進む日本の最重要課題の一つとなっています。
1.認知症を理解する
①前期必修講座「認知症について」を参照ください。
②認知症サポーター養成講座標準教材「認知症を学び地域でささえよう」を合わせて参照ください。
2.認知症サポーターとは
認知症について正しく理解し、偏見を持たず、認知症の人や家族に対して温かい目で見守ることがスタートです。
認知症サポーターは何か特別な事をする人ではありません。
認知症の人やその家族の応援者です。
「温かい目で見守ること」から一歩進んで何ができるか考えてみましょう。
一人ひとりがすべて違うように対応は一様ではありません。
そのことを心して何ができるか考えましょう。
認知症の人が困っている様子が見えたら「何かお手伝いすることがありますか」と一声かけてみます。
具体的な援助はできなくても理解者であることを示すことができます。
「お互い様ですから、お気遣いなく」と言った一言やねぎらいの言葉で家族の気持ちはぐっと楽になるものです。
日頃のお付き合いに応じてより進んだ支援も考えられますが、踏み込み過ぎないことも大切です。