知って役立つ排尿についての基礎知識(排尿サポータ育成講座)

講師 彦根市立病院 看護師 
    西村 紀子 先生

1.おしっこの基礎知識

尿は体内でできた不要なものを排出する重要な役割があります。
尿は腎臓で作られ、尿管を通して膀胱に蓄えられ、膀胱からは尿道を通して排出されます。
膀胱は脳と情報交換している高度な臓器で、おしっこを我慢し、逆に尿意が無い時でも排出を実行できます。
年齢と共におしっこに関する困りごとが増えてきます。
75歳以上の人は50%が尿漏れの経験があるそうですが、年のせいだから仕方がないと思っていませんか?
老後の生活において食事の介助は容易ですが、時間が未定なトイレは大きな問題です。
早めに予防に努めることが大切です。
一般的なおしっこの目安を示しておきます。
一日の回数は4~7回、
一回の所要時間は15~25秒、
一回の量は200~500mlで一日の総量は1000~1500mlです。
体重による差を考慮する場合は20~30ml/Kgで計算してください。

①失禁、おもらしの種類
「何度もトイレに行くけど、すっきり出ないし漏れる」
「咳やくしゃみで漏れてしまう」
「トイレに辿り着くまでに漏れてしまう」などの声があります。
原因がそれぞれ違うので対策も異なります。
腹圧性 お腹に力が入ると漏れる。
切迫性 予定外に膀胱が縮むことがあり、トイレに行きたいと思ったら間に合わない。      
溢流性(いつりゅうせい) 膀胱が完全に縮まず、尿が残っていて漏れる。
機能性 認知症等、膀胱以外の機能障害でトイレに行くまで時間がかかり間に合わない。
②トイレが近い
「何度もトイレに行くが残尿感があり、また行く」
「トイレに行っても残尿感があり、痛みもある」
「トイレに行った事を忘れて何度も通う」
認知症や感染症が原因の場合もありますが、ストレスで水分を取る量が多いという場合もあります。
基本的には膀胱の収縮が不十分で尿が残る場合や過敏症も考えられます。
高齢になると尿を貯める量が少なくなるので尿意を感じる頻度が高まります。
これは膀胱及び膀胱を支える骨盤底筋と言う筋肉は弱くなり尿を蓄える量が減っている為です。
この筋肉も鍛えることができますから、年齢に従ってこの筋肉の衰えを予防することが大切です。
③尿がでにくい
「前立腺肥大があり、いつも残尿感がある」
「子宮ガンの手術をしてから尿が出にくい」など病気やその後遺症が原因の事があります。
尿が出にくい場合は病気が原因であることが多いので病院を受診しましょう。
④薬による副作用
人によっては薬の副作用で排尿障害が発生することがあります。
排尿障害の可能性が知られている薬は睡眠薬、精神安定剤、血圧の薬、アレルギーの薬、風邪薬、胃腸薬などです。

2.排尿障害のケア方法

ケアの原則
①骨盤底筋体操で予防する。
②膀胱機能等治療できるものは治す。
③治せないなら、改善する。
④改善できなくても、活動制限を克服して気持ちよく過ごす。

骨盤底筋体操
人が二足歩行を始めた為に、常に骨盤底筋に力がかかるようになりました。
この筋肉は鍛えることが難しく、高齢化と共に筋力が低下し尿漏れの要因になります。
この筋肉を鍛える骨盤底筋体操が考案されて排尿障害の予防には効果が確実な体操です。
体操の注意点
骨盤底筋は弱くて簡単に疲れる筋肉です。
疲れた状態で鍛えても効果が少ないのです。
生活の中に取り入れ、毎日、数回、継続して行うことがポイントです。
詳しくは 滋賀県排尿支援プロジェクトを検索してください。
治療に際し医師に伝える事
病院で医師に伝える情報は大切です。
飲んでいる薬の情報を持参します。
「どんな時に漏れるか」
「尿の回数と量のデータ」は何回も使える計量カップでデータを取ります」
「尿が出にくくなった時期」
治せなくてもできるだけ、気持ちよく過ごす為に
オムツ、パッド等用具の改善は進んでいます。
女性用、男性用があり吸収量もいろいろな種類があります。
詳しくは、おむつ情報局などネットで情報を検索してください。

3.排尿サポーターの役割

高齢者はおしっこの困りごとが多いものです。
安心して気軽に話せる地域づくりが必要です。
身近な人から相談を受けて相談先を紹介するのが役割です。
・プライバシーに十分配慮し、知り得た情報は秘密厳守です。
・安心して話せるように否定せず話をさえぎらず、思いや気持ちを汲み取りながら、良く聞いてください。
・医療の必要性は専門家の判断が必要です。
相談窓口の利用、医療機関の受診に繋ぐように心がけます。

4.相談先

① 医師
「尿の回数が増えた」「トイレが間に合わない」「頻尿で夜眠れない」「尿が出にくい」
② 薬剤師 
「薬を飲み始めて尿が出にくくなった」
③ 市町の保険センター 県の保健所
尿の回数が増えた、病院に行った方がいいか? 尿漏れ
④ 市町地域包括支援センター、介護支援専門員(ケアマネジャ)
おむつの選び方、使い方、簡易トイレの選定