近江の戦国史と城郭

中井先生の講義は全5回です。
1回目:近江の戦国史と城郭(彦根キャンパス)
2回目:小谷城のフィールドワーク:近江の山城「小谷城の見方、調べ方」
3回目:安土城のフィールドワーク:近江の近世城郭「安土城の見方、調べ方」
4回目:彦根城のフィールドワーク:近江の江戸期の城「彦根城の見方、調べ方」
5回目:研究発表会(彦根キャンパス):レポート作成・発表・まとめ

4月7日(金曜)、中井先生の最初の講義です。 1回目の講義は 「近江の戦国史と城郭」です。
1回目から中井ワールド全開でした。 講義の進行が速く、ついていくのが精一杯です。
理解度は50%くらいでしょうか? 特に印象に残ったことを記述していきます。

◆はじめに

近江の城といえば、まず、天守がある「彦根城」を思い出します。また、城址としては、「安土城、観音寺城、小谷城」をイメージします。
滋賀県には約1,300個所の 「城郭と城郭址」 が確認されています。この数は全国的にも上位です。

2回目からの 「フィールドワーク」 は、近江の城なかでも代表的な 「小谷城、安土城、彦根城」 が対象であり、楽しみでしかありません。
中井先生は 「城郭」 研究の第一人者であり、多数の研究論文を発表しています。
「戦国の城と石垣」 などの著書も多数出版し、特に城郭の 「石垣、瓦、基石(礎石)」 に造詣が深いです。

午前中は、中井先生ご自身の自己紹介のあと学科全員の自己紹介も行いました。 
中井先生の自己紹介で 「自分の好きなことをしようと定年前に役所を早期退職したこと」 、「辞めた後、次々とスカウトされたこと」 が印象的でした。

◆城址は土木施設

〇今、お城が面白い。「城ブーム」です。   〇城郭跡で戦国時代を体感できます。
〇城址は 「土からなる土木施設」 です。  〇城址は 「曲輪、切岸、土塁、堀切」 など 「防御施設」 しか残っていません。
〇観光のため、天守を復元した城はありますが、 「想像の範疇」 です。  〇真実は石垣とかの 「土木施設」 にあります。
〇滋賀県内に約1,300の城館跡があります。 まさに近江は 「城の国」 です。

◆甲賀の城

〇戦国時代は 「縦社会(身分制度)」 でありますが、甲賀は横のつながりが強く 「横社会(民主主義)」 を形成し、甲賀郡中惣 「同名中」 を組織していました。
〇一村一城:約248か所の惣毎に城が分布していました。 〇一辺3~50mの小規模の城ですが、周囲に最大高さ8mの大土塁があります。

◆観音寺城

〇近江守護佐々木六角氏の居城、「城域はきぬがさ山432m全て」 、「戦国最大の山城、きぬがさ山の南部379mに位置」 
※以前の講義で学習した京極氏の居城の上平寺城も 「弥高寺の聖地」 に築城していました。
〇安土城に先行(38年前)し、石垣が設置されています。
〇寺院勢力の石垣技術を活用し、鏨(たがね)で割った技法で石材を積みます。 ※石垣に矢穴と呼ばれる穴があるのが特徴

◆小谷城

〇戦国大名 浅井亮政により 「標高495.1m(比高390m)の小谷山」 に築かれました。
〇戦国時代の山城:山城【詰城:防御空間】、根小屋 【山麓居館:伊住空間】 の二次元構造の浅井三代の居城 
〇小谷城:清水谷【山麓居館】、本丸【詰城:防御空間】、大嶽(おおずく)【山頂詰城】、貯水池【長期籠城】 
〇発掘調査:大広間の調査から巨大礎石建物、37,000点(ほぼカワラケ)の出土遺物を発見→【詰の空間でなく、日常生活の空間】 
〇【落城はしましたが「焼失」はしてはいません。】

◆近江の山城から「安土城へ」

〇水茎岡山城跡(1508)の発掘調査:日本最古の石垣か?(安土城の68年前)
〇鎌刃城跡と小川城跡:半地下式構造の礎石建物 【後の天守の穴蔵】
〇近江城郭の諸要素を安土に導入:石垣(観音寺城)、礎石建物(観音寺城・小谷城)、天守(鎌刃城)=【信長城郭の3要素:石垣・瓦・礎石建物】
※しかし、瓦はまだ使用していなかった。

◆城を攻める城【付城、取出】

〇井元城址:虎口に突出して防衛と敵を誘い込む二重の小曲輪【重ね馬出】 と 主郭背後に構えた溝囲いの空間【兵の駐屯地】
〇土山城址:馬出(主郭虎口の前面に設けた小規模な曲輪 
〇付城(つけじろ):敵の城を攻めるための城

◆安土城

〇象徴城郭:統一政権のシンボルとしての「見せる城」誕生、天正4年~7年(1576)完成、3年後に焼失 
〇城郭位置:安土は水陸両用の地、琵琶湖の水上交通を重要視
〇城郭革命:土の城(軍事施設)から石の城(軍事+政庁)【3要素:石垣(高石垣)、瓦(金箔瓦)、礎石建物(天守)】
〇高 石 垣:小牧城、岐阜城の巨石技術(算木積)※穴太衆の技術ではない
〇天   守:五重六階地下一階、絵画(狩野永徳) 〇金 箔 瓦:手間を要す凹部に金箔  

◆彦根城

〇彦根山:頂部に「本丸、太鼓丸、鐘の丸、西の丸、出曲輪」 と 山麓の「表御殿」の【戦国の二元的構造】
〇登石垣:朝鮮出兵で築かれた倭城の影響
〇堀  切:太鼓丸と鐘の丸間、西の丸は出曲輪間の巨大堀切
〇山切岸:彦根山の山裾を垂直に削った防御施設
〇天秤櫓:両端の二重櫓、登城道を上から監視・攻撃できる櫓
〇天  守:居住施設ではなく、変化に富んだ破風、華頭窓など外観を重視

◆まとめ

〇【近江の城】 を語らずして 【日本の城】は語れず 
〇城郭は親しまれ易い遺跡→各地で保存や整備が活発、【まちづくりの核に】
※滋賀県の国指定史跡:特別史跡2つ【彦根城跡、安土城跡】、史跡8つ【観音寺城跡など】