野菜づくり・土つくり (元八日市南高校教員:松原治夫先生) |
レイカディア大学 彦根キャンパス 園芸科44期生 広報部会編集 更新日:令和5年2月23日 |
1.はじめに 今回から待ちに待った「野菜づくり」の勉強が始まります。 皆さんは以下のような経験はありませんか? ①種を撒いたけど芽が出なかったり、芽は出たけど実が大きくならなかった・・・・・どうして? ②キュウリの実がつくまでに葉っぱが黄色く枯れてしまったけど・・・・・どうして? ③お隣の畑では苗1本から50本のキュウリが収穫できたのに、うちの畑では10本・・・・・どうして? ④形の曲がったキュウリが多いんだけど・・・・・どうして? ⑤大きく太いダイコンが収穫したいのに細くて短いのは・・・・・なぜ? 私もおいしい、大きな野菜を、たくさん収穫したい・・・という思いで園芸学科に入学したうちの1人です。 これから野菜づくりの基礎を経験豊富な松原先生にご指導頂きながら、皆さんと一緒に勉強していきたいと思います。 2.第1章 野菜づくりの基本 (1)野菜の種類と分類 ・まずは基礎の基礎、身近な野菜の種類と主な分類方法について ①野菜は、花卉(鑑賞を目的に栽培)、果樹と共に「園芸作物」と呼ばれるが、用途によっては「農作物」として扱われる。 ②野菜の主な分類法には、「植物学的分類」と「園芸的分類」がある。 ③「植物学的分類」は、遺伝的な類縁関係や生育の特性を知るうえで重要な分類である。 ④「園芸的分類」は、私たちがその野菜のどこの部分(根、茎、葉、実など)を利用するか、という視点で分類する方法。 ⑤「植物学的分類」では、「科」が同じ野菜は同じ病気や害虫の被害を受けやすく、連作障害への対応が必要となる。 ・特に「ウリ科」(カボチャ、キュウリ、スイカ、ニガウリ、ハヤトウリ、ヘチマ、メロン)、 「ナス科」(ジャガイモ、トウガラシ、トマト、ナス、ピーマン、ミニトマト)等は連作障害の起こりやすい野菜である。 ・分類の単位は「種」を基本とし、よく似た「種」を集めて「属」、よく似た「属」を集めて「科」というようにまとめられる。 (2)栽培の難易度 ・野菜づくりが初めて(ビギナー)の人は、育てやすい野菜を知ることから始めよう。 ・栽培が比較的簡単なのは、葉菜類(結球しないタイプ)で、キャベツ、タイサイ、キョウナ、コマツナ、リーフレタスなど。 ・また、葉菜類には種まきから収穫まで期間の短いものが多く、あまり手間がかからない。 ・栽培が簡単な野菜でも、最も育てやすい時期に、その時期に合う品種や病気に強い品種などを選んで栽培する。 <初心者向け野菜>
(3)品種の選び方 ・同じ野菜でも様々な品種があります。 <選び方のポイントは!> ①栽培時期に合う品種を選ぶ ・植物によって発芽時期が異なり、発芽に適した気温にならないと発芽しないことを知る。 ②初心者は早生の品種を選ぶ ・早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)等の品種がある野菜では、早生を選ぶと良い。 ③病気に強い品種を選ぶ ・耐病性の品種が開発されているので、それらの品種を選ぶことで病害を軽減出来、栽培しやすくなる。 (4)連作障害<---詳細はクリック! ・同じ「科」の野菜を同じ場所に続けて栽培すると、余った肥料分が根に障害を起こしやすくなる。 これは野菜づくりで一番気を付けるべきポイントで、特に「ウリ科」、「ナス」科、「マメ」科で発生しやすい。 <連作障害の対策としては!><---詳細はクリック! ①「輪作」(同一野菜の植え付け場所を4~5年でローテーション)する。(毎年、春・秋の作付けプランを立てて休裁年限を守る) ②堆肥や腐葉土などの有機物を多く施す。(4月に入手したら秋に使う等、発酵・分解済のものを使用する) ③石灰資材(苦土石灰等)による土壌酸度(pH)の調整を行う。(大体の野菜は、pH6~6.5の弱酸性が適している) ④接木苗(トマト、スイカ、キュウリ等)を使う。 ⑤病気に強い抵抗性品種(耐病品種)を使う。 ⑥良く知られている、タキイ、サカタ等、良い品種を選ぶ。(トマト:フルティカ、スイカ:シマオウ等) ⑦天地返しを行い、土中の余った肥料分の濃度を下げる。(スキやスコップ等で30Cm位深掘りして上下層を入れ替える) なお、連作障害により病気になったときは、それぞれの病気に対応した薬剤・殺菌剤を散布する。 (5)園芸用具について ・菜園の準備から収穫まで色々な作業が必要になるので、それぞれの作業に適した農具が必要となる。 <あると便利な農具> ①ショベル、スキ :天地返し、掘り起こしに必要。(管理機があれば労力が少なくて済む) ②三角ホウ :除草、中耕、土寄せ等、これ1本あれば、先・横・後ろ側を使い分けて色々と便利に使えます。 ③レーキ :畝の表面をキレイにならしたり、刈り取った雑草を集めたりするのに使います。 ④移植ゴテ :植え穴を掘る、苗を掘り上げる、土をかぶせる等、植え付けの必需品です。 ⑤ハサミ :果菜類の収穫等に使う、先の尖った「収穫バサミ」や、製枝等には剪定バサミを使います。 ⑥箕(み) :集めた草や収穫した野菜等を運ぶ時に使います。肥料を撒く時にもバケツより便利に使えます。 ⑦セルトレイ :苗作りの為の種まきに使用します。柔らかいもの、硬いもの、穴数の大小等、色々あります。 ⑧マルチカッター :マルチ(フィルム)をした時、植穴を土と一緒に丸く切り抜くのに便利です。 ⑨土壌酸度計 :土の酸度(pH)を測定するのに使います。水まきして測定します。畑を一度は測定しておく。 ⑩一輪車 :畑地まで農具や肥料を運搬したり、収穫物を集めるワゴンとして使用できます。 (6)土づくり ・野菜がすくすく育つには、健康な土を用意してあげることが最も大切です。 「水はけがよく、水持ちがよい」団粒構造の土が野菜づくりに適しています。 ①土質のチェック :少し湿らせた土を「ぎゅっ」と握ったとき、ゆっくりバラける程度の粘性の土がベスト。 粘土質の時は砂などを入れて粘土調整たり、畝の高さを高くしたり対策する。 ②土層のチェック :野菜づくりに適する柔らかい層が表面に30Cm以上あれば良い畑といえる。 ③水はけのチェック :雨の後、2~3日経っても水が引かない畑は水はけが悪い。畝高にしたり、土壌改良で対策できる。 ④土壌酸度のチェック :野菜づくりに適した土壌は、pH6~6.5の弱酸性が良い。苦土石灰等で酸度調整する。 ⑤肥料の与え方 ◎有機物(腐葉土)をすき込む(十分発酵済のもの) ↓ (2~3週間後) ◎酸度調整(苦土石灰[マグネシウム入り]、有機石灰[マグネシウムなし]) ↓ (1週間後) ◎元肥施肥(有機物入り、化成肥料をプラスOK) ↓ (1週間後) ◎植え付け(種まき):植え付け後の脇芽取りは1~2日間隔で行う ↓ (2週間後) ◎追肥(有機物入り、化成肥料をプラス):追肥は収穫までに3~4回施す ↓ (20日後) ◎追肥(有機物入り、化成肥料をプラス) ↓ (20日後) ◎追肥(有機物入り、化成肥料をプラス) (7)肥料の役割と分類 ・人間と同じく野菜が健康に育つためには、適切な「栄養」(肥料)が欠かせません。 <肥料の三大要素>
<有機肥料と化学肥料の違い>
(8)肥料の種類と性質 ・実際に畑で使う肥料には、土壌酸度調整、土の物理性を高めるもの、野菜の養分となるものなどがあります。 <家庭菜園で使われる主な肥料>
(9)種まきについて ・ただ土中に埋めるだけではない、種まきの基本をマスターしておこう。 ①発芽条件:水・酸素・温度が必要。光はなくても良いが、光によって発芽が促進される好光性種子(ゴボウ、レタス等)がある。 ②水分が不足すると胚の生育が止まり発芽不良の原因となる。逆に水分過剰だと酸素供給量が不足して発芽不良となる。 ③酸素は種が発芽する時に呼吸するために必要となる。 ④発芽には野菜ごとに適温があり、発芽を揃えるためには適温の範囲内(15度~30度)で種を撒く必要がある。 ⑤種の撒き方:すじまき、ばらまき、点まき、ポットまき等がある。 ⑥「点まき」は、2粒~3粒まきにするのが作業性が良い。 ⑦「すじまき」、「点まき」を行うときは、肥料を撒き溝の下に筋状に施肥すると施肥効率が良い。 ⑧「ばらまき」を行うときは、畑全体にまんべんなく施肥する必要がある。 ⑨ニンジン、ダイコンは、高畝にするのが良い。 ⑩収穫時期を長くするため、極早生、早生、中生、晩生の種を組み合わせて利用するのが良い。 ※掲載の写真は松原先生の講義風景 |
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【松原先生の講義風景】 |
【先生のプランター栽培写真】 |
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【熱心な講義に席を立って集まってきました】 |
【先生が持ってきてくれたイチジクの枝木と干し柿】 皆さんで分けて頂きました! |